呟き以上

おたくのひとりごと

【利府革命】Perfume "PLASMA"宮城初日 考察・ライブレポ

※この記事は「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」のネタバレを一部含みます。
これを読んだ所で、実際のライブ体験に勝るものはありませんが・・・(ツアー中のあ~ちゃんのMCより引用)

 


 

2022年10月7日
セキスイハイムスーパーアリーナ

Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA" 宮城公演1日目。
想定観客収容率は32%。
大声あり公演。

 

"日常"が止まってしまった2020年2月26日。

”アーティスト・Perfume”として最高の意思を表明した2021年8月14日。

 

そして、時代が切り開かれようとしている、2022年10月7日。
ライブを最初に止められてしまったPerfumeが、”紅白歌合戦に14年連続出場中の国民的アーティスト”として、声出しあり公演を実施することに大きな意味があった。

宮城公演初日が「声出し公演」と決まったのはライブの2日前。その瞬間からライブ当日まで、私は何を考えても上の空だった。

また一歩、本来の魅力が詰まった”Perfume WORLD”が戻ってくる。そのことで頭が一杯だった。

Twitterのフォロワーも、「大声あり公演」と決まった後にチケットを取った人達が、数えられるだけでも10人以上いた(狂っている)。私を含め、既に”PLASMA”ツアーに何度も足を運んでいる人達ばかりだ(狂っている)。
この公演直前のワクワク感は、他の公演には無かった感情だし、絶対にこのライブを成功させてやる、と強い覚悟をもって参戦した。

 

収容率32%という数字は決して喜べるものではないが、座席間隔が広い=割と好き放題できることや、何度も言うが久々の声出し公演である。逆境を利用しようというPerfumeの姿勢に、2010年東京ドーム公演のNHKドキュメンタリー番組でのかしゆかの言葉が頭をよぎった。

 

ファンとして色々な意味で試される公演になるのだろうと、ポジティブに気合いを入れていたが、ライブが始まってみると、Perfumeの3人は私・私たちの想像とはかなりかけ離れた感情を持っていた公演だった。
その公演の模様を、一人のファンの記録として残していきたい。

 


 

Image

宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
この日の天気は雨、気温は10℃と季節外れの寒さ。

この会場までのアクセスは、最寄りの利府駅からバス、その利府駅に来る電車も毎時1,2本。仙台駅から直行バスもあるが、所要時間は約40分(混雑で時間が読めない)と、極悪のアクセスを誇る。
またこの宮城公演初日は、平日かつ開演時刻は19:00と遅く、終演時刻を考えると遠征民はもちろん、地元民にとってもあまり嬉しくない時間。

収容率32%となった背景はこうしたアクセスと開催日時、加えてコロナ禍の影響でライブにお客さんがまだ戻ってきていないこともあるだろう。

 

そんな時間、そんな場所へ、わざわざやってくる猛者たちだ。開場中から、これまでの公演とは明らかに違う、異様で特別な空気が漂っていた。

「どんな状況もプラスに変える」
それは私達ファンも同じ気持ちだった。

Perfumeが切り開こうとしている新しい世界。これまでもそういう機会は何度かあった。その世界は未知で、初めての新鮮な体験で、後から振り返った時に「あの日のPerfumeは本当に最高で、最高にカッコよかった」と思える経験ばかりだ。その船に乗っかって後悔したことは一度もない。

そしてこの2年半で、Perfumeには新しいファンが沢山増えたと思う。Twitterを続けていて、新規ファンを見かける機会を肌で感じていた。そういった、これから何が起こるのか、見当もつかない人達もこの公演に駆けつけている。

 

会場に入場したら、既にメンバーを呼ぶ声が聞こえてきて、すごくすごく懐かしかったし、「ああ、こうだったな」とかつてのライブを思い出して、それだけで涙が出そうになってしまった。
思えば、この日の異様な気合の入った空気感は、FC限定ライブに近かった。

私はというと、ほぼ正面スタンドの2列目。今ツアーではかなり良い席だ。開演寸前からもうワクワクが止まらず、座席で飛んだりメンバーを呼んだりして、落ち着かない人になってた。とにかく気合い入りまくり。

「この日のライブを、この選択をしたPerfumeの為に、最高の日にしたい。」

その一心だった。
余談だが、開場中にメンバーの声を叫ぶことを、私はこれまでしてこなかった。しかしこの日ばかりは叫んでいた。少しでも3人の力に、ライブを成功させることに加担したかった。

 

「まもなく、開演いたします。」

 

影アナのその一言、大拍手と大歓声で会場が震え上がった。

公演内容も成熟してきたツアー13公演目。
955日ぶりに、Perfumeと私たちが、声を用いて鼓舞し合える空間が始まっていた。

 


流れ雲

 

アルバム1曲目「Plasma」の低音がセキスイハイムスーパーアリーナに響く。天井付近まで昇った機構の紗幕が落とされる。そして無数のレーザーに包まれる中、スポットライトの当たる天井付近からPerfumeは姿を現し、その瞬間、大歓声が会場を包んだ。

 

あ~ちゃんは何度も下をうつむいていた。

 

この時、私たちはまだPerfumeの胸の内を知らない。けど、涙を拭えずに何度も下を向く姿を開演から見るのは、このツアーどころかこれまでのライブでも私は見たことが無かった。
しかし、私たちファンの想いは確実に伝わっている、それだけは確信が持てた。

 

今回のツアーは1曲目に「Flow」が選ばれている。あ~ちゃんはNHK番組「SONGS」でこの楽曲を歌うときに、「私たちとファンの関係性を書いた楽曲」と言っていた。
ツアーが始まり、この曲が1曲目に選ばれた意味を考えつつ、歌詞を読み直してみる。

ツアー中のMCでは、アルバム”PLASMA”、そしてツアーについて以下のように話されている。

次の時代が 変わる時代が
あの日の未来が 雨のように
止まないままで 晴れないままで
そうさ 僕らは流れ雲になる
Flow - Perfume

この「Flow」こそが、「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」を構成する鍵だと感じている。

この2年半で、忘れられない日や忘れられない報道もあった。「先の読めない未来を、時代の変化を愉しみながら生きていこう」と前向きに捉えられる面もあり、一方で「あの日抱いていた未来は約束されない」という、悲観とまではいかないが、影を含んだ詞でもあると思う。

 

この詞を読んで、私はPerfumeを”流れ雲”と思ったことなんて一度もないな、と思った。

本人たちは、自分たちを無力だと感じたこともあったかもしれない。でもファンから見れば、Perfumeはいつだって未来へ引っ張ってくれる存在で、想像もしなかった世界へ連れていってくれる。それでいて、私たちと同じ目線に立ち、寄り添ってくれるのだ。

「いつだって今がスタートライン」と武道館の真ん中で歌ったあの日、「青春謳歌」と叫んだ元旦の日、「起こせミラクル」と眩い衣装を身に纏い言い残したあの日。

 

この日のライブだってそうだ。あ~ちゃんは今日を「革命の日」と言った。また新たな歴史を、いつもより大きなPerfumeの歴史を刻もうとしている。

 

そんな「Flow」があるからこそ、「再生」が際立って心に響く。

いつか1人の国から 便りが届いて
だから行かなきゃ行かなきゃ

最大限界生きたいわ

全身全霊で向かうわ
再生 再生 再生成

再生 - Perfume

Perfumeの姿は、いつだってすべてを受け止める「再生」の歌詞そのもの。
そしてこの日の「再生」が終わってからは、なかなか3人にスポットライトが当たらなかった。

 


 

この日、あ~ちゃんは終始泣いていた。

その涙は「申し訳ない」という気持ちがほぼ全面を支配していたようだった。
具体的には以下の四点が理由のよう。
・「32%」は悔しい数字だし恥ずかしい数字である
・「32%」という数字にがっかりしたファンがいるかもしれない
・会場に関わる人の仕事を減らしてしまったかもしれない
・平日、この会場、この時間に来たい人が来れないということを考えてあげられなかった

なんというか、ファンのこととはいえ、他人のことにここまで寄り添って考えてくれるアーティストが居るだろうか。
そもそも、この宮城初日が平日公演となったことも、「日曜日が空いてなかった」ことで、「でも宮城だけ1日しかやらないなんて寂しいじゃん」というメンバーの意向から来ているそうだ。更に言えば、「32%」の数字を公に出したのは「少しでも安心してライブに来て欲しい」という想いだったとのこと・・・

一応Perfumeの名誉のために添えておくが、翌日の宮城公演2日目はSOLD OUTだ。

 

これは最後のMCだが、私はPerfumeを追いかけていて、がっかりしたことなんて無いし、もっとファンを信じてくれても良いのにな、と思ったりする。

でも、私が常日頃思っている「Perfumeには恩返しできないくらい色々なものを貰いすぎている、いくら感謝しても感謝しきれない」という想いと、似たようなものをPerfumeも持っているのかもと考えれば、それはそれでPerfumeとファンとの良い関係性を持っている証拠なのかな、と思ったりもする。

曲が終わってから最初のMCは、そんな気鬱な雰囲気があったが、チーム分けの頃には明るさを取り戻していた(けど、基本的にずっとあ~ちゃんは泣いていた)。

 


 

どんな状況もプラスに変える

 

どんな状況であっても、私たちファンが一番出来ることは「精一杯楽しむこと」だと思う。そして今日を最高にしたいという気持ちはPerfumeだって同じだ。逆境を逆手にとった最高のライブは、こうして幕を開けた。

ライブで、自分の大好きな人たちに向かって、自分の大好きな気持ちをぶつけるこの感覚は本当に久しぶりだった。声を出すことでこんなにも全てを開放して、Perfumeのことで頭がいっぱいになるこの感覚を忘れていた。メンバーも言っていたが、自分も知らないうちに、声を出さないライブに慣れていた。

曲中のダンスパート・曲終わりで歓声があがる感覚も、「Perfumeです!」を一緒に言う感覚も、チーム分けで手と声をあげる感覚も、始まってしまえば自然と出てくる出てくる。「自分、Perfume大好きすぎだろ」と思ってちょっと面白かった。

 


 

足りないの

 

遠回り してばかり この灯り
そのために 旅をした

I will, I will いっぱい 足りないの 切なくて
I feel, I feel いっぱい 会いたいの ボクだって

ハテナビト - Perfume

「Flow」と同じように、「ハテナビト」もこのツアーを構成する大事なピースだ。

「ツアーを通してみんなに会いたかった」というPerfumeの想いはどの公演でも語られており、ステージセットが観客との距離が近い360度ステージになった背景の一つに挙げられるだろう。

このツアー、3人がとにかく沢山目線をくれる。所謂”ファンサ”だが、あ~ちゃんかしゆかはともかく、いつもクールに魅せているのっちが、あんなにニコニコしながら沢山ファンサをくれるのは初めてではないか。有明か名古屋で「手を振ったら沢山振り返してくれて楽しかった」みたいなことを言っていたので、何か心境の変化があったのかな、とか思ったり。

 

限られた時を駆ける
あの頃夢見た 全てがほら ショーウィンドウにある

Time Warp - Perfume

私は「Time Warp」のこの歌詞が本当に好きだ。
無敵のPerfumeが歌う無敵の曲だと思っている。

この「Time Warp」の前に歌う曲が、2010年=初の東京ドーム公演を控えた時期の楽曲というのも憎いセトリだなと思う。

 

だいじょうぶ だいじょうぶ って言ってくれるキミの
声が 背中押して 今日だって
ステージに立つの

マワルカガミ - Perfume

(長野公演2日目MCより)

(宮城公演初日MCより)

たまたまであるが、のっちが「マワルカガミ」の”声”について話していたのが、直前の長野公演2日目だった。

「声を出さなくてもみんなの想いは伝わっていた」ということを、のっちはどの公演でも繰り返し説いていた。そんな中、この「マワルカガミ」がセットリストに入ったライブで声を出せたことは、Perfume的にも、”PLASMA”的にも大きな意味を持っていたのではないか。

 


 

第四形態

 

P.T.A.のコーナー」が始まるときに、あ~ちゃんは「身体を動かしたり、声を出したり…」という言葉を、自然と発していてなんともたまらない気持ちになった。何度も当たり前に聞いたフレーズのはずだが、このコーナーの趣旨を再確認できたことが嬉しかった。

この日ほど泣けた「Party Maker」は無かった。

Perfumeのライブを作ってきた、”Perfumeのライブのため”の楽曲。

手をかざして 光を感じて

もっと欲しいでしょ みんなで上げて
包み込もう このステージ
盛り上げてこのフロア 揺らして

Party Maker - Perfume

100%のお客さんが入って、何も気にせず声が出せる、そういった完璧な形でのライブでは無い。
しかし、あの日までのライブが戻ってきたどころではない、それ以上の新しい”何か”をこの詞を歌うPerfumeに感じていた。Perfumeがここに存在する意味、Perfumeがライブをする意味、そんなことよりもっと単純で、でも言葉に言い表せない”何か”がこの曲に詰まっていた。

 

この道を走り進み進み進み続けた

エレクトロ・ワールド - Perfume

絶対的な信頼と 対照的な行動
絶望的な運命が ある日恋に変わる
一方的な表現の ツンデレーション キミが
好き わかりにくいね puppy love

Puppy love - Perfume

I don't want anything
いつだって今が
Wow 常にスタートライン

STAR TRAIN - Perfume

 

明日からの新しいPerfumeが始まっていく。

 

ブレイク後も突っ走ってきたPerfumeは、「Reframe」をきっかけに自身の活動を振り返り、「P Cubed」を通じて自身の歴史自体を糧とし、また新たな道を歩み出そうとしていた。

 

しかし想定通りいかなかった未来があった。

 

2021年の [polygon wave] ライブには、ファンと一緒に未来を創っていきたい、その想いが強く表れていた。

今回の”PLASMA”ツアーは、想定されなかった未来で、「もっとみんなに寄り添いたい、私たちが少しでもみんなの力になりたい」という想いが3人のMCやパフォーマンス、そしてセットリスト(特に終盤)に強く表れている。その想いが「人間臭いもの」という一つの形として表れたのだと思う。

 

想定外に実現されたこの「大声アリ」公演。

Perfumeがファンを想う気持ち、ファンがPerfumeを想う気持ちが爆発したこの日が、「人間味あふれるライブ」そのもの。”ファンと一緒に”を大切にしてきたPerfumeが、これまで以上にファンと緻密な関係を作り上げて、共にPerfumeを創造していきたい。それが完成したとき、”第四形態”のPerfumeが集大成を迎えるのではないだろうか。

その創造の過程で、この宮城公演初日が一つのターニングポイントとなったことは間違いないだろう。
そしてのっちが言っていたのと同じように、私たちファンにとってもこの日はご褒美のような公演だった。

 

そしてPerfumeは、また私たちを引っ張り、明るい未来へ導いてくれる。

Perfumeを追い掛けていれば、Perfumeを想える日々があれば、楽しい日々がある。

これまでもそうだったように、これからもそうなんだと、強い確信と確かな希望を得られた一日だった。

当然だって思ってた運命が 変わる 変わる 変えるよ

さよならプラスティックワールド - Perfume

 

 


 

あとがき

 

Perfume LIVE 2021 [polygon wave]” を目撃したとき、「このコロナ禍で、ここまで非日常空間・Perfume WORLDを構築できるのはPerfumeしかいない」と、感服したのを覚えている。

今ツアー"PLASMA"でもそれは同様だ。

最近のライブで目立っていた映像演出は影を潜め、360度ステージかつ会場の端から端まで花道が伸びる、「Perfumeを間近に感じられる」「私だけ・僕だけのPerfumeを見つけられる」ステージセット。声が無くても楽しめるよう、曲間や照明、MC、P.T.A.のコーナー他、微細な部分まで工夫が詰め込まれたライブ。Perfumeにしか作り出せない空間がここにはある。

まだ”PLASMA”を体験していない人、Perfumeのライブを体験していない人にこの記事を読んで頂けたのなら、ぜひともPerfumeのライブに参加してみて欲しい。
執筆時点で、18公演のツアーも残すは埼玉・北海道の4公演。予定が合えばぜひ。特に北海道は会場が小さい=距離が近い上にまだチケットが取れる!

 

また、今回の記事の執筆にあたり、MCの内容について、アオキュさん(Twitter@aoky_)許諾の元、MCレポートを引用させて頂きました。MCレポ無しでは語れない公演だったので、感謝してもしきれません。ありがとうございました。
アオキュさんの宮城初日の詳細なMCレポートはこちらもぜひ。

 

残すは4公演。私も参戦いたします。
この”PLASMA”を経てPerfumeがどういった道を歩んでいくのか、そして私たちファンは全力で楽しむことを楽しみに。

 

長い記事でしたが、最後までありがとうございました。