呟き以上

おたくのひとりごと

【”掟”の核心】”CODE OF PERFUME” ライブレポート・考察

Perfume LIVE 2023 "CODE OF PERFUME"

 

突如発表されたロンドン単独公演。開催は2か月後に迫っていた。

 

2014年以来約9年ぶりのロンドンで、ワールドツアーでもなく、1公演のみ開催のプレミアムライブ。

公演タイトルの和訳はPerfumeの掟」

この表題を受け取った時、「この公演はPerfumeの活動上ターニングポイントになる」と即座に思った。どんな形の公演になるか簡単には想像できないが、”掟”を冠し、前述したとおり特別な背景で開催される公演である。

このライブは2023年のPerfumeが活動を歩んでいく上で、指針となるだろう。

 

などと考えながら、今年もPerfumeを追い掛ける気満々のオタクは、朝4時に映画館へと向かった。

 


 

暗転し大歓声に包まれたO2 Shepherd's Bush Empire

冒頭、”Perfume 7th Tour 2018 "FUTURE POP"”のOPを彷彿とさせるような、これまでに開催したワンマンライブタイトルをLEDの地球儀上に次々と映し出されていく演出。そこにはロンドンで最後にライブを行なった2014年以降のライブが流れていた。2020年2月26日の文字も刻まれていたのがズルいなと思ったり。

しかし、このカウントは2020年の”Perfume Imaginary Museum “Time Warp””で終わり、次に出されるのは今回2023年の”CODE OF PERFUME”である。
そう、このプレイバックに2021~2022年のライブは含まれていないのだ。”[polygon wave]”も”PLASMA”もないことになっているようだった。

 

コロナ禍では日本でライブが出来なくなっただけではない。海外ファンからすればPerfumeのライブに行くことが出来なくなっていた。とすれば、Perfumeが海外ファンと最後に”繋がれた”のは、オンラインライブ”Time Warp”だったと汲み取ることができる。

 

そんなことを考えていたら、フォーメーションに着くメンバーの3Dモデルが投影された。見慣れたポージングだ。久々の海外公演の1曲目にこれを持ってくるか!とニヤニヤしてしまった。

1曲目は「FLASH」。9年前はこの世に存在しなかった楽曲だ。Perfumeが新たな形を模索し始めた時期にリリース、EDMがJ-POPへ完璧に落とし込まれている。大ヒットでPerfumeの代表曲に昇り詰めた楽曲だ。

この曲がリリースされてからもうだいぶ年月が経ったように感じるが、ヨーロッパのファンはもっと長い間Perfumeを待っていたんだな、と思ったり。

今回披露された「FLASH」は、LEDも照明も衣装もシンプルに”白”系統しか使われていない。”勝負の白”を徹底したパフォーマンスにチームPerfumeの覚悟を見せつけられる。
Perfumeはこの曲に並々ならぬ思いを賭けて挑んでいることが映画館のスクリーンから痛いほど伝わってきた。映像の疑似照明と実際の照明とのリンク、それらをバックに次々とキメていくPerfumeの姿は美しい。振付に合わせて動く照明は、もはやPerfumeが操っているようにしか見えない。
個人的に”FUTURE POPツアー”の「FLASH」が演出・衣装含め大好きで、この時もシンプルな白系照明・白衣装だったと記憶している。
今回の「FLASH」はそれよりも圧倒的にパワーアップしており、なんだかロンドンのファンが羨ましかった。

 

間髪入れず「エレクトロ・ワールド」が続く。路上アイドルから這い上がってきたPerfumeと共に一心同体となって歩み続けている楽曲だ。「この道を走り進み進み進み続けた」という歌詞はPerfumeそのものをリアルタイムで物語っている。

 

レーザービーム」は安定のAlbum-mix。会場を盛り上げるための照明でなく、メンバーのフィジカルを重視した照明は、”ストレイト”と身体の端まで伸ばしきるこの曲の振付によく映える。
”レーザービームだがらレーザー飛ばしておけば良いっしょ”みたいな安直なライティングではないのがMIKIKO先生らしくて良い。

 

ダンス・フィジカル重視の照明使いは2018年の”FUTURE POPツアー”から力を入れ始めたと記憶している。当初は手探り感もあったが、”Reframe 2019”を経て”[polygon wave]”で完成を迎えたと感じている。今回も「レーザービーム」に加え前述の「FLASH」などもそうだが、この演出は今や当たり前に組み込まれており、”Perfumeそのもの”を魅せ尽くせる最強の武器に成長した。
それを海外にしっかり持ち出せていることもチームの凄みを感じる。

 

聞きなれないイントロ・・・と思いきや非常によく知った曲のイントロが流れてきた。中田ヤスタカ曰く「ポリリズム Pro Max」。
ポリリズム」なんて16年も前の曲になるが、ここにきて新たなバージョンが制作されるという大事件。イントロ以外にもちょくちょくアレンジが加えられており、音源化が待ち望まれる。

 

と、ここまで”Perfumeといえば”の4曲を惜しげもなく繰り出した。久々のロンドン公演に、まさしく名刺を差し出したようだった。

久々の海外公演だが、ここまでどの曲でも3人が終始会場全体を見渡しながら踊っているのが印象的だった。緊張はしているのかもしれないが、それ以上に楽しそうで楽しそうで、見ている方が幸せだった。

衣装は”Reframe 2019”のラストに着用していたものだが、この衣装でこれら4曲を歌唱したことは一度もないのがミソで、新鮮な印象だった。そういったこともあり、既成衣装ということに気付かなかった人もいるんじゃないだろうか。

 


 

短めのMCを挟み、「∞ループ」「Spinning World」「アンドロイド&」と続く。ここは2022年の”PLASMA”ツアーのセットリストを、映像や演出含めてそのまま輸出した形になる。

更に”Reframe 2019”から「FUSION」「edge」も当時と変わらない形で披露。
着席鑑賞公演向けに作られた演出で、通常のライブでこの”Reframe”向けの演出をそのままの形でパフォーマンスするのは、これが初めてのことと思える(Reframe→FUTURE POPでは明確なバージョンアップが施されていたため、初めてのことと表現した)。

”Reframe”の演出がライブを盛り上げることが出来る。これを証明できたことは今後のライブ演出の幅を広げることに繋がると思うし、もっと早い時期にこれをやりたかったのかな、とも思った。

 

そのまま「Visualization」の冒頭から「Atmospheric Entry(Perfumeの掟 2016)」へ続き、ここでタイトル回収。7年ぶりの披露に沸いた。のっちのキレよ。衣装は「ポリゴンウェイヴ」だった。

 

そのまま「ポリゴンウェイヴ」「無限未来」と続く。ここは”Perfume LIVE 2021 [polygon wave]”の輸出だ。これでワールドツアーを実施した”FUTURE POPツアー”を除き、2014年以降の主要ライブをハイライトで振り返ったことになる。

 

ここでこの日が誕生日、新曲「ラヴ・クラウド」が音源共に初披露された。かなりクラブに寄せた曲で、TikTokを意識したような振付も印象的。もしかしてPerfume、売れようとしてる?売れてくれ。

この振付を一番可愛く一番エモく踊れるのはこの3人だからだな、と思ったりしていた。幸せが詰まった振付、すこ。
衣装も”Perfume LIVE 2021 [polygon wave]”の鏡衣装が振付とカラフルな演出に良く似合っていた。

 


 

コール&レスポンスを挟み、「FAKE IT」そして「チョコレイト・ディスコ (2012-Mix)」と続いた。「チョコレイト・ディスコ」を鏡衣装でパフォーマンスするのはズルすぎるし眩しすぎる。なによりこの曲にも背景映像がしっかり作られていたことが嬉しかった。この映像がカッコ良さを引き出し、引き締まった印象を与えている。盛り上がるし可愛いし楽しいしカッコいい。この衣装での「チョコレイト・ディスコ」は日本でもやって欲しいな。

 

最後の楽曲は「MY COLOR」。これまでのワールドツアーでも歌われ、”WORLD TOUR 3rd”では海外のファンとPerfumeが文字通り一つになる、感動的なシーンが記憶に根強い(この模様は映画”WE ARE Perfume”にもフル尺で取り上げられている)。
あ~ちゃんが「(振付)覚えてるの…?」と感極まっていたが、覚えているに決まってるじゃないか、9年待っていた方たちだそ、と声を大にして言いたかった。でも9年も行けなかった本人たちからしてみれば、待たせすぎてしまったという不安もあったのかもしれない。

「手のひらが世界中 繋がるウィンドウ」という歌詞は、Perfumeが世界へ発信するメッセージと解釈していた。しかしライブビューイングが実施された今回、”ロンドンにいるPerfumeから日本のファンへ向けたメッセージ”とも受け取れることがズルい。

 

「それでは、Perfumeでした!」

 

ここ数年封印されていた挨拶を残し、熱狂冷めやらぬステージをPerfumeは後にした。

 


 

Perfumeにとって挑戦。

私はそう印象を抱いていた海外公演だったが、この公演を通して強く感じたことはPerfumeがロンドンに帰ってきた”ということだった。
9年ぶりのステージをまるでホームかのように、「私たち、こんなに成長したんだ」と言わんばかりの清々しさと自信をステージから放ち続けるパフォーマンスは、まさしく最強のPerfumeだった。Perfumeはいつでも憧れの存在だと改めて感じた。

 

この公演はセットリストや演出など既存のものもあったが、焼き直しなどとは1mmも感じさせないし、そうではない。9年間日本で積み上げた見せられなかったもの、見せたかったもの、それらを詰め込んでヨーロッパの方たちに見てもらうというのが、大きなテーマだった。

 

そしてもう一つ、この”CODE OF PERFUME”の目的は、2023年のPerfumeの活動指針を明確にすることであると思う。これまでもPerfumeはキャリアの中でターニングポイントとなるイベントを実施してきたが、この公演もその一つであるだろう。

 

今年大阪城ホールで開催された”REQUESTAGE 2023”、スペインでのフェス”Primavera Sound 2023”共にセットリストは代表曲やヒット曲、ライブ定番曲を中心とした構成となっていた。映像演出も”P Cubed”や”[polygon wave]”までに見られたフィジカル重視のものを再度採用している。”Reframe”の演出がライブにそのまま用いられることも特筆すべきことだ。

個人的にはアナログが目立つ”PLASMA”を経た中で「はて、なぜここにきてこの構成を?」と思っていた。

 

これは本来2020年の集大成プランだったものではないだろうかと思う。

 

”Reframe”は「Perfumeが今までつくり上げてきたパフォーマンスを、演出振付家MIKIKOとクリエイティブ集団・ライゾマティクスが最先端の演出アイデアと技術で再構築し、Perfume の今をストーリーとして見せるコンセプトライブ」と定義されている。

2018年当時のPerfumeが”Reframe”という手段を選んだ目的には、来る2020年のアニバーサリーイヤーに向けて、Perfumeの軌跡を振り返り“再構築”することで、現在のPerfumeを見つめ直し、更に未来の可能性を広げていくというテーマがあったと私は考えている。
これを実現するためにこれまで実施した様々なトライのうち、テクノロジーをクローズアップしさらに大胆に活用することで、メンバーのパフォーマンスに没頭する工
夫が”Reframe”では突き詰められていた。

 

”Reframe”はどうしてもショー形式という印象が強い。しかし”CODE OF PERFUME”では、”Reframe”を敢えて通常のライブに採用することで、逆説的に「私たちにとって一番大切な場所はライブ」という”掟”を改めて明示した。

”CODE OF PERFUME”。このタイトルに隠された公演の目的は、”Reframe”をライブという場で更に再構築し、Perfumeの軸は何か、大切なものは何かを表現する、これまでで最も”Perfumeの掟”の核心に迫ったライブだったのではないだろうか。

奇しくも「アンドロイド&」から「edge」までの衣装は、”Reframe”の色替え衣装だった。

 

2020年以降このプランは一度置かれていた。”[polygon wave]”ではコロナ禍を経た再起動・テクノロジーの集大成を魅せ、”PLASMA”はコロナ禍で気付いたファンとの関係性や距離感を大切にする姿勢へシフトした。
ここまでコロナと向き合ったのは間違いなく2020年2月26日があったからだし、 その現実を真摯に演出に盛り込み、一変した世界までもPerfumeの歴史に包み込んだ。
そしてコロナが明け、”[polygon wave]”、”PLASMA”の歩みを当初の集大成プランに盛り込んだことで、更にパワーアップした形で2020年以降のプランを歩み直し始めた。

Perfume、今年は最強かもしれない。

新曲からも中田ヤスタカの意気込みを感じるし、TV Bros.でも本当に気合が入っていそうな印象だ。

 

2023年のPerfumeは、これまでで最も”Perfumeらしさ”を前面に出した1年を歩むのでないだろうか。毎年毎年、Perfumeには想像もできないような期待を沢山してしまう。期待していいですか?